放蕩する惰性

取るに足らない調べ物の供養など

膿瘍固定って何ぞや。

 

カミュ『ペスト』には膿瘍固定という聞き慣れない言葉が登場する。医師のリウーがペストに罹って苦しむアパルトマンの管理人を治療する場面だ。

膿瘍固定と日本語で検索かけてもヒットしない(よね?)。まあ正直、この言葉の意味がわからなくてもこの物語の本筋の理解には全く関係が無い。

が、何だか気になったので調べた。

 

リウーは膿瘍固定を試みた。は原文のフランス語だとRieux tanta un abcès de fixation.となっている。

abcèsが腫瘍とか膿瘍で、fixationは文字通り固定という意味。ちなみにabcès de fixation で仏語辞書ひいても膿瘍固定としか出てこない。

 

さて、abcès de fixationでWeb検索かけると、やったあ!Wikipediaがヒットする!

わあ!フランス語とエスペラントの2言語でしか記事が無い!

https://fr.m.wikipedia.org/wiki/Abcès_artificiel

エスペラントは読めないので、ポーランド人の眼科医であるザメンホフに思いを馳せつつフランス語で読む。

あとこのサイトも参照して、以下にまとめた。

https://medecine-integree.com/abces-de-fixation/

 

20世紀の初め頃、免疫障害や感染症の症状に対して行われていた治療法。症状の広がりを抑え、それを局所化するために、テレビン油か放線菌の1種(正直よくわからない。マイコバクテリウム?まあ、とにかくなんかの菌)を皮下注射して、腫瘍を意図的につくる。でも意味無いし合併症もおこるしで今は使われてないみたい。

 

『ペスト』本文ではリウーはテレビン油を使っていて、治療の痛みに苦しむ管理人が描写される。意味無いのにねー。